民家の店・宿 民家の店・宿

民家の店・宿

情報誌『民家』の「民家の店、民家の宿」シリーズからの抜粋です。

  • 福岡/直売所・農家レストラン「アプテカ・フレーゴ」

    情報誌『民家』129号

     築50年ほどの農家住宅を改装したアプテカ(直売所)とフレーゴ(農家レストラン)は、世界遺産となった新しん原ばる・奴ぬ や山ま 古墳群や、漁業や塩田で栄えた津屋崎千軒など、歴史的な風景を多く残す津屋崎地域の、畑が広がる風景の中にあります。
     オーナーのシルビオさんと愛さんのご夫婦が農業を始めたのは、15年ほど前のこと。料理人のシルビオさんは、日本に来た当初はレストランで働きながら農業を始め、そのうち農業に専念するようになりました。そして自分たちが作った野菜などを販売するショップを始め、この建物に出会い、念願の自分のレストランをオープンしました。
     レストランを開きたいと考えながらも自分が使いたいイタリア野菜を作るために、まずは農家になるという選択にシルビオさん夫婦のこだわりがはっきりと表れています。
     何年間も探してやっと出会ったこの建物は、津屋崎生まれの愛さんが幼いころから「おばあちゃん」と呼んでいた顔見知りの方の家だったそうで、とても深い縁を感じたそうです。間取り変更や内装デザイン、リフォームのための解体から施工まで、ほとんどのことを自分たちでやたという店内は、シルビオさんが思い描いていた日本の民家とヨーロッパの雰囲気を融合させた他にはないユニークな空間になっています。
     DIYでの改装は今でも続いており、アプテカの販売スペースも1年ほど前に完成したばかりです。楽しそうに次の改装の構想を話すお二人の姿を見て、この家を建てたおばあちゃんが喜んでいる顔が見えるような気がしました。
    (福岡県・正会員 T.I.)

    住所 福岡県福津市渡153
    電話 090-39-3650(フレーゴ)
    営業 ランチ・カフェ:11:30~14:00(ランチ)、14:30~17:00(カフェ)
    ディナー:土曜日のみ18:30~21:30(ディナー)
    定休日 月曜、第一火曜

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    情報誌『民家』129号
  • 埼玉/「繭久里(くくり) カフェ」

    情報誌『民家』128号

     東北道の加須IC(埼玉)をおりて、のどかな田畑の中を車で進んでいくと昔ながらの塀に囲まれた農業生産法人誠農社と、そこに佇む古民家カフェ「繭久里(くくり)」が現われます。
     外観はどこか懐かしい田舎の農家さんの家そのものですが、中に入ると奥行きが感じられる明るいカフェ空間が広がります。
     コンセプトは「大地と人と繋がるカフェ」。内装には無垢材や漆喰など天然素材が使用されていて、裸足でも上がれる快適さ。母屋は100年以上前の「繭まゆ小屋」(※ギリシャ語で繭のことをcucuriという)を再生活用したものです。
     所在する誠農社や地域の農家による無農薬や漢方農法、自然栽培、といった大地と人に優しい食材を取り入れた料理が楽しめて大満足、「次に来るときは、あれを食べてみよう…」とリピーターになること間違いなし。店内のショップには漢方農法米(玄米も!)やオーガニック食材と地元野菜やお米(玄米も!)などが所狭しと陳列されていて、買い物も楽しめます。
     また、農園には宿泊施設やキャンプ施設もあり、カフェの2階のイベントスペースでは、ヨガ教室、朝ピラティス、なども行われていて地域の交流の場となっています。(栃木県・正会員 T.S)

    住所 埼玉県加須市油井ケ島1393番地1
    電話 080-3204-9961
    定休日 水曜日
    営業時間 朝のカフェタイム 8:00~11:00
    ランチタム(平日)11:30~15:00
    ランチタム(土日祝)11:30~16:30
    ディナータイム(※予約制)18:00~22:00
    メニュー、予約 下記ホームページをご覧ください。
    HP https://park.ethicalgp.com/cucuricafe/

    情報誌『民家』128号
  • ピュアリィレストラン(梅鉢× purely)

    情報誌『民家』127号

     「一町一寺制」の町割りの「古町」は、加藤清正の入城以前から存在したと言われ、江戸時代は城下最大の町人地として栄えました。特、唐人町通りには城下町を代表する大店が立ち並びました。西南戦争(1877年)の際には市街戦を避けるために官軍による建物疎開(焼却)が行われました。
     その後再建された店の1 つが「ルーツピュアリィ」(2020年、「ナチュラル&ハーモニックピュアリィ」より改名)の建物です。昔ながらの伝統的な食をはじめとする「衣・食・住・遊・学」のすべての面でのナチュラルなライフスタイルを提案するモールになっています。 「ピュアリィレストラン(梅鉢×purely)」は、「ルーツピュアリィ」の東館奥にあり、2023年6月に日本料理の「梅鉢」とコラボしてリニューアルオープンしました。
     敷地裏を流れる坪井川は熊本城の外堀を兼ね、細川藩時代には水運の大動脈でした。地下部分には米俵を運び込んだ船着き場がそのままレストランとして再生され、熊本地震の被災による大規模な復旧を経て、熊本城下を代表する瀟洒な空間となっています。
    (東京都・正会員 S.S.)

    住所 熊本市中央区唐人町15 ルーツピュアリィ東館B1F、1F
    電話 096-323-1551/096-323-1552
    営業 ランチ・カフェ:11:30~16:00(営業日:金・土・日)
    ディナー:17:00~21:00(要予約、定休日:月・水)
    定休日 月・火(祝日は営業、振替休日あり)
    アクセス 熊本市電「呉服町」電停より徒歩3分
    HP 「ルーツピュアリィ」https://www.rootspurely.com/
    「ピュアリィレストラン」https://spurely-restaurant.com/

    情報誌『民家』127号
  • 川尻町家たまりば(こどもキッチンブルービー)

     熊本市南区川尻のはずれにひっそりと建つその民家は、大正時代に料亭として建てられた建物である。熊本地震で被災し、建物は短手方向に40㎝ほど傾き、危険なため更地にす る予定であったが、さまざまな手を借りなんとか保存された。
     外観は漆喰壁と腰板。開口部には木製格子が設置され、古い町並みの景観に合わせてある。入口を入ると20畳のカウンターの土間があり、北には小さな坪庭が併設されている。その奥に床の間と書院のある6畳の和室がある。2階には床の間と書院のある12畳の和室と12畳の続き間があり、仕切りの欄間は1本の木を輪切りにした形をしている。近所の方が、この欄間のことを懐かしいと言い小さいころの話をされていた。
     現在は、近所の方や、放課後の子どもたちのたまりばとなっている。子つかみ、カウンターに座りくつろいでいる。毎日20~30名の子どもが遊びに来て、宿題をしたり、漫画を読んだり、談笑したりと、各々のコミュニケーションをとっている。月に2回第1、3土曜日に子ども食堂を開催している。毎回100名前後の利用者が訪れている。2階はレンタルスペースとなっている。「ここでの食事や交流によって、苦手克服や地域の方との交流を通じて、子どもたちは成長し、地域の方の生きがいづくりや地域の見守りに繋がる交流の場としていきたい」と代表の松枝さんが話されていた。
     「川尻町家たまりば」のあるこの地域は、高齢者が多く、子どもが少ない地域だったが、たくさんの子どもの声が集まり、にぎやかになり、高齢者の生きがいとなっている。 (熊本県・正会員 M.F.)

    住所 熊本市南区川尻3丁目17-17
    電話 070-5810-4568
    川尻町たまりば 平日12:00~18:00 日曜日は休日
    レンタルスペース9:00~20:00利用可能
    こども食堂(公式LINE @7003g) 毎月第1・3土曜日(変更あり)
    参加者子ども100円、大人300円
    HP https://aoihachi.com/

    情報誌『民家』127号
  • 神奈川/手打そば「くりはら」

     丁寧に手入れされたお庭のアプローチを抜けて、入口の引き戸を開けると、外観からはなかなか想像できなかった、広々とした空間が広がります。戦後すぐ、昭和20年代に建てられ、店主の栗原さんの祖父母がお住まいだったという古民家。栗原さんが学生の時に、取り壊す、という話も出たものの「壊さないで、とっておいて」とお願いしたそうです。
     古民家改修は未経験ながらも、地元の大工さんの協力のもと、2年かけて家を手入れし2007年にお店をオープンされました。壁は漆喰や珪藻土を塗り、床は杉板に蜜蝋ワックス、柿渋やベンガラで、なるべく自然素材を使って仕上げたそうです。古民家の2階では、かつて、秦野の名産であったタバコの葉を乾燥させていました。
     入口を入って右手が、今は蕎麦を打つ部屋となっており、ガラス越しに蕎麦打ちをされているライブ感が楽しめます。お店の奥には囲炉裏もあり、煙で燻された梁や柱が温かな味わいを醸し出しています。
     お蕎麦は石臼を使ってそばの実を挽き、秦野の自然の恵みを活かし、その時々の季節ならではのメニューを提供されています。ちょうどお伺いした際はセリやコゴミなど、春の山菜を使ったお蕎麦の季節でしたが、夏は素揚げしたナスの皮をむき、出汁に浸して翡翠色を出した「翡翠そば」なども登場予定です。
     家も生き物で、自分の身体の延長であると考える栗原さん。朝、お店に入る際には「おはようございます」と挨拶しているそう。
     小さい頃の思い出をお尋ねすると、祖父と一緒に庭の八重桜の花を摘んだり、祖父母や親戚のかたが縁側でお茶を飲んだりしていたエピソードをお話しくださいました。
     栗原さんが大切に愛情を注いできた古民家で、お庭を眺めながらゆったりとお蕎麦を味わってみてはいかがでしょうか。
    (東京都・友の会会員 Y.M.)

    住所 神奈川県秦野市渋沢2098
    電話 0463-88-1070
    営業 11:30~15:00(L.O.)
    定休日 月・火(祝日は営業、振替休日あり)
    メニュー 手挽きざる(1,100円)、麻ひしお(1,350円)
    翡翠そば(1,400円)
    HP https://sobakurihara.studio.site/