民家の店・宿 民家の店・宿

民家の店・宿

情報誌『民家』の「民家の店、民家の宿」シリーズからの抜粋です。

  • 東京都/古民家カフェ「晴ノ舎」(ハレノヤ)

    この春、東京都で島を除く唯一の村、檜原村の人里(へんぼり)地区に登録有形文化財旧高橋家住宅を活用した古民家カフェ「晴ノ舎」がオープンしました。店名には「訪れた人が晴れやかな気持ちになれるように」という思いが込められています。店主は元檜原村地域おこし協力隊の土井智子さんです。
     高橋家は江戸時代からこの地で代々農家を営み、養蚕もしていましが、7代目が医者(漢方医)であったことから「医者殿」と呼ばれ、当時は駕籠に乗り山を越えての往診も行っていたそうです。平成27 年に高橋家から檜原村に寄贈され、保存・活用に向けた工事が進められてきました。かぶと造の大きな屋根、ケヤキの大黒柱、式台や駕籠から風格が感じられる建物です。
     「檜原村の人や自然が大好き。地域の人々から慕われ親しまれていたこの場所を、村民の方と一緒に村の魅力を発信していく交流の場として活用していきたい」と土井さんは言います。カフェで使用している野菜や果物は近所の人たちが作ってくれたもの。暖簾やスタッフ衣装は地域の染物作家さんによる制作。お店のスタッフも得意を持ち寄り、料理や店内の装飾を担当しています。
     今後はカフェとしてだけでなく、自然豊かな檜原村を巡るエコツアーの拠点として、またイベントやワークショップの開催、文化財ウィークの時には「医者殿」ゆかりの資料の展示なども予定されているそうです。皆さんもぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか。(神奈川県・友の会会員 A.M )

    住所 東京都西多摩郡桧原村人里2032
    アクセス バス:「西川橋」バス停すぐ
    営業時間 4~11月/10:00=17:00(カフェ営業11:00~16:00)
    12~3月/10:00=16:00(カフェ営業11:00~16:00)
    定休日 4~11月(月・火)、12~3月(月・火・水)
    メニュー 季節のランチセット:1,800円、ケーキセット:800円
    ケーキ単品、ドリンク単品:440円~
    お問合せ harenoya@gmail.com
     

  • 長野/洋食屋「La.Lumiere」

    情報誌『民家』121号

    築約100年の蔵を改装、フランス料理をベースにしている洋食屋さんです。オーナーシェフの小池さんは、10年間、長野県軽井沢町で飲食の仕事に携わった経験を生かし、9年前に地元長野市に戻り2020年10月にお店をオープンされました。
    料理には長野市街地から約12㎞北西にある飯綱高原の自家菜園で採れた手づくり野菜を使用しています。
    店舗として改装したのは、米や肥料を貯蔵する蔵。天井が高く広々とした空間が特徴です。建物は土台部分に石を2段積み上げた構造で、これは近くを流れる川が氾濫した場合に備え、水に浸かることを考慮したつくりとのこと。蔵戸や2階に上がる階段もtとうじのまま残し、外観もあまり手を加えず当初の趣のまま路地の景観の一部となっています。
     レストラン入り口にはお花屋さんが併設されており、色彩豊かな花がシンプルな蔵の空間を飾っています。
    JR長野駅から徒歩10分。大通りから1本入ったお店のある路地にはところどころ明治・大正・昭和期の名残もみられます。 この春、町並みの散策を兼ねて信州の旬の野菜を召し上がってはいかがでしょうか。(東京都 正会員Y.Y.)

    住所 長野県長野市大字南長野新田町1541
    電話 026-217-1487
    メニュー おすすめ:季節ごとのプレートランチ
    定休 日曜日・第1.3月曜日(祝日営業)

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    情報誌『民家』121号
  • 佐賀/陶器ギャラリ「gallery KAI」、カフェ「cafe Reed」

    情報誌『民家』121号

     伊万里市南波多町の里山、美しい日本の原風景が残る唐津の谷合にひっそりと佇む「櫨ノ谷窯」。
     ここの窯主は、親子二世代で砂岩を原料とする古唐津の製法の再現を確立し、業界の先駆けとなった吉野敬子さん(父は故・由野魁氏)、この地で作陶や個展活動のかたわら先祖伝来の田畑で自然農法を行う「半農半陶」を営んでいます。吉野さんのもとには関東など日本各地から半農半陶  ここを訪れて、まず目に入るのは、美しく手入れされた主屋の葺ぶき屋根で、古民家ファンの気持は昂ります。 主屋は吉野さんの作品がずらりとならぶ陶器ギャラリー「gallery KAI」。畳部屋に座ってひとつひとつ手に取って唐津焼独特のざらっと心地よい感触を楽しむことができます。
     そして隣接する「café Reed」は2018年にクラウドファンディングで牛小屋をリノベーションしたもの。週末限定の営業で、自家焙煎珈琲と地元のオーガニック野菜や果物で作った極上スイーツを吉野さんの器でのんびりと味わうことができます(手作りジャムも絶品!)。このカフェは里山で暮らす人びとと訪れた人びととの貴重な交流の場にもなっています。(栃木県 T.S.)

    <櫨の谷窯>

    住所 佐賀県伊万里市南波多町高瀬767
    電話 0955-24-2025

    <gallery KAI>

    営業時間 12:00~18:00※平日のギャラリー見学の場合は要連絡
    定休 不定休

    <cafe Reed>

    営業時間 12:00~18:00(土日のみ営業)
    定休日 平日(土日のみ営業)

    情報誌『民家』121号
  • 京都/茶房「O間-MA-」

     世界遺産「東寺}のすぐ近くに、大正末期に建てられた地区100年の京町屋が残されています。建築当時、家主は炭問屋を営んでおり、離れの和室など、こだわりや想いが随所に感じられます。
     その歴史を今に引き継ぐのは、店主でデザイナーの酒井俊明さん。「茶の湯の考えで現代生活における和建築の在り方を構築すべく〝継ぐ〟をコンセプトにした空間をデザインしています。近代住宅へと改装されていた意匠を建築当時に戻してから今の姿へと再構築し、リノベーションも自ら施しました」との言葉通り、味わいある土壁や壁一面の建具などを目にすることができます。圧巻の茶房は、高さ7・4mある空間と長さ8mある天井梁に目が奪われます
     茶房では日本各地で選定された100 種類を超える日本茶が楽しめます。日常とは違ったお茶の深みと楽しさを味わえるのも京都ならではです。和菓子店「いと達」と考案したお茶漬け菓子「茶妙(さみょう)」。3種類の一つ襄陽饅頭は糖度20%とごく控えめな甘さのあんこのお菓子、それに玉露を注ぎ、茶とともに変化する味を体験することができます。
     坪庭を介した離れの和室では茶事や茶道体験も催され、歴史ある町屋で現代の日本文化を味わうことができるお店です。 (京都府 H.t)

    住所 京都府京都市西区九条比永城町59
    電話 075-748-6198(予約優先)
    営業時間 11:00~17:00
    定休日 水曜日
    メニュー 100種類以上から選べる日本茶:1,000円~(税込み)
    茶味比べ(日本茶飲み比べ3種類~):2,500円~
    お茶漬け菓子「茶妙」(全3種):1,300円
    HP https://Oma.jp
     

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  • 神奈川/甘未処「無心庵」

    古都鎌倉、江ノ電和田塚駅の正面に、無 心庵がある。駅の正面にあるといえど、店に入るには踏切のない線路を渡らねばならない。どうやら江ノ電は、もともとあった民家をかき分けるようにして敷かれたらしい。歴史ある門構えとこの不思議な甘味処に、日々多様な世代が足を運ぶ。店を構えたのは、3代目オーナーである佐藤さんの祖母。佐藤さんが11歳だった30年前に自宅を店にした。建物自体は釘を1本も使っていない築約100 年のもので、開店時にはあまり手を加えず、テーブルや座布団をそろえたくらいだったという。現在は奥さんと2人で経営をしており、メニュも代々受け継いできたこだわりのものを用い「自然体」で営んでいるとのことだ。お客様の呼び込みもインスタグラムとホームページ以外では行っておらず、まさに「自然体」で商いを楽しんでいる方である。 メニューはゴールデンウイークと月初旬を目途に変更し、新要素の導入や、お客様に合わせたメニュー変更にも取り組んでいる。 そんな佐藤さんの古民家への思いも、また「自然体」であった。店はだけであって、「古民家だから」という概念は持っていないのだそうだ。だからこそ、民家の解体が進む古都鎌倉での現状には「もったいない」と声をこぼしていた。民家の維持にはお金と労力がかかるのは確かだが、一度壊されたら元には戻せない現代日本の民家の現状を嘆いているようであった。コロナによる緊急事態宣言により何度も休業を強いられた「無心庵」。「自然体」にこだわりぬき、他のどこでも体験することができないこの店に、客足が戻ることを願う。(神奈川県・正会員 塩崎 陸)

    住所 神奈川県鎌倉市由比ガ浜3丁目2-13
    電話 0467-23-0850
    定休 木曜日(祝日営業)
    メニュー 冬季限定:田舎汁粉(850円)、あんころ餅(900円)、あつあつ白玉きな粉(750円)
    HP https://mushinan.chobi.net