熊本市の主要道路「国道3号線」沿いを車で走ると、立ち並ぶチェーン店とは明らかに空気感が違う場所がある。カフェレストラン「芳文」だ。一瞬、時間が止まったかと見紛うほど、そこは静寂で、凛とした美しさを保っている。元酒蔵のその建物は、昭和59年にこの場所に移築された。以前は、酒蔵の町、御船の御船川沿いに建っていた。
洪水対策の護岸工事に伴い、売りに出された3棟のうち1棟の建物をオーナーが購入され、レストランを始められた。現在のシェフは縁あってオーナーと親戚関係となった二代目で、任されて12年が経つそうだ。
このご時世にホームページもないが、リピーターが絶えず、ランチタイムの開店時にはあっという間に前面の駐車場が埋まってしまう。デート、女子会、家族でのお祝い事など、多様な客層を受け入れる度量の大きな空間と、地元食材を活かした美味しい洋食。世代を超えた人気店だ。
そして、ここには密かな伝説がある。カップルが成立する席があるのだ。現シェフも今の奥様と結婚前に客として来店していて、まさか自分がここで料理を振る舞うことになろうとは思ってもみなかったそうだ。
平成28年の熊本地震では、瓦の一部落下と漆喰のひび割れ程度で、幸い構造体に大きな被害はなく、補修して営業を再開された。建物は、移築時に窓を増やすなど多少の改造はあるが、ほぼ原型をとどめており、出入り口もそのまま、鍵も木製の旧式のままだ。2階は、ギャラリー空間として無料で開放されている。
ここで食事をすると不思議な温かさに包まれ、ありのままの自分になれる。建物を大事に活かしてきた経営者と、長く見守り続けてきた客の作り出す空気感が、そうさせるのかもしれない。これからも、末長く地域に愛されていくことだろう。
(神奈川県・友の会会員 M.K.)
住所 | 熊本県南区南高江5-7-76 |
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電話 | 049-214-1617 |
カフェ・バー | 定休日 毎週水曜日 |
宿泊 | ドミトリー(相部屋)と個室の2種 |
営業 | 無休 |