2戸の長屋を1戸に、職住一体の暮らしができるよう再生。伝統工法に基づく躯体の健全化と、手仕事の跡や既存建物に見られる過去の痕跡を残す形で仕上げ。東部1階は全面三和土に。吹き抜けがあることで半屋外的な使い方ができる。天井は必要最低限のみ張り、野地板あわらしや大和天井のままとしている。小舞は補修。既存材は埋木などでなるべく利用。新材は古色塗装を行わず経年変化に重きを置いている。
完成することなく手を加えながら住む家、ここからが自分の領域ここからが他人の領域という線引きを緩やかにして暮らす家、土地や建物が持つ歴史のほんの一部でたまたま自分達が直し住む家、という思いから、この家のことを「仮の家」と呼んでいます。当初は利便性を追求した計画を考えいてましたが、スケルトンになった既存建物を何度も訪れているうちに、自分たちの暮らし自体を考え直して、この家にどれだけ寄り添っていけるかということを念頭に家づくりをしました。
(中略)施工中は現場に度々足を運び、職人さんたちの考えを聞き、仕事の様子をたくさん見せてもらいました。大工さんの職種の垣根なく、臨機応変に柔軟に対応される仕事ぶりに大変感心し、家が蘇っていく過程を安心して任せることができました。
住み始めて半年経った今では「古い家」という感覚はすっかりなくなり、新旧の材が混在する状況に何の違和感もありません。自分たちの年齢をはるかに超える年月を、人の暮らしを支えながら存在してきたこの家が、また同じだけ、もしくはそれ以上の未来を生きながらえていくために、今できることをする。私たちがここで暮らすのは、この家が持つ歴史の中のほんの一部に過ぎないということ。これらを心に、子供にも伝えながら、一緒に歩んでいけるといいなと思っています。(設計・建築主より)
再生後 外観
再生後 内観2
奨励賞No. |
200320 |
完成年 |
2019年9月 |
所在地 |
京都府京都市 |
設計 |
アラキ工務店 |
施工 |
アラキ工務店 |
構造規模 |
木造2階建 |
敷地面積 |
90.71m2 |
1階面積 |
54.03m2 |
2階面積 |
39.24m2 |
延床面積 |
93.27m2 |
主な外部仕上げ |
屋根:日本瓦
壁:土壁漆喰塗、焼板張り
建具:木製建具 |
主な内部仕上げ |
天井:大和天井、化粧野地板あらわし
壁:土壁中塗り仕上
床:三和土土間、畳、板張り
建具:木製建具 |