古都鎌倉、江ノ電和田塚駅の正面に、無 心庵がある。駅の正面にあるといえど、店に入るには踏切のない線路を渡らねばならない。どうやら江ノ電は、もともとあった民家をかき分けるようにして敷かれたらしい。歴史ある門構えとこの不思議な甘味処に、日々多様な世代が足を運ぶ。店を構えたのは、3代目オーナーである佐藤さんの祖母。佐藤さんが11歳だった30年前に自宅を店にした。建物自体は釘を1本も使っていない築約100 年のもので、開店時にはあまり手を加えず、テーブルや座布団をそろえたくらいだったという。現在は奥さんと2人で経営をしており、メニュも代々受け継いできたこだわりのものを用い「自然体」で営んでいるとのことだ。お客様の呼び込みもインスタグラムとホームページ以外では行っておらず、まさに「自然体」で商いを楽しんでいる方である。 メニューはゴールデンウイークと月初旬を目途に変更し、新要素の導入や、お客様に合わせたメニュー変更にも取り組んでいる。 そんな佐藤さんの古民家への思いも、また「自然体」であった。店はだけであって、「古民家だから」という概念は持っていないのだそうだ。だからこそ、民家の解体が進む古都鎌倉での現状には「もったいない」と声をこぼしていた。民家の維持にはお金と労力がかかるのは確かだが、一度壊されたら元には戻せない現代日本の民家の現状を嘆いているようであった。コロナによる緊急事態宣言により何度も休業を強いられた「無心庵」。「自然体」にこだわりぬき、他のどこでも体験することができないこの店に、客足が戻ることを願う。(神奈川県・正会員 塩崎 陸)
住所 | 神奈川県鎌倉市由比ガ浜3丁目2-13 |
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電話 | 0467-23-0850 |
定休 | 木曜日(祝日営業) |
メニュー | 冬季限定:田舎汁粉(850円)、あんころ餅(900円)、あつあつ白玉きな粉(750円) |
HP | https://mushinan.chobi.net |